
【尾鷲】三重県の尾鷲市は28日、養殖技術開発などを手掛ける新興企業「ADジャパン」(東京都港区)との間で、同市の中部電力尾鷲三田火力発電所跡地でのエビの陸上養殖場建設に関する立地協定を結んだ。来年9月に第1期稼働を目指す。年間最大600トンまで生産可能量を拡大予定で、アジア2位、東アジアでは最大規模となる見込み。

市によると、陸上養殖場の進出は、同発電所の跡地活用案「おわせSEAモデル」の一環。市と尾鷲商工会議所、中部電力でつくる協議会が企業誘致活動を進めていた。
尾鷲養殖場(仮称)は発電所第1ヤード跡(約11・3ヘクタール)を長期貸借し、来年1月に第1期が着工。令和9年以降、年間200トンで生産基盤の安定化を図り、最大で年間600トンまで拡張する。
生産するエビは、安定的な養殖が通年で可能なバナメイエビ。稚エビは3―4カ月で約15センチに成長するという。使用水量を最小限にする同社独自の養殖技術「完全閉鎖循環式」を採用する。
同社は韓国ゴチャン養殖場を稼働済みで、着工中のサウジアラビアを含め、現在5カ国で事業計画を進めている。
この日、同市朝日町の尾鷲商工会議所で、協定締結式があり、同社の奥村朋子代表取締役や加藤千速市長、立会人で商議所の北裏大会頭らが出席。奥村代表取締役と加藤市長が協定書に署名した。
加藤市長は「尾鷲SEAモデル構想の実現に向けた第一歩。雇用創出による地域活性化に期待したい」とあいさつ。桜の開花時季に、養殖エビを用いた「エビ祭り」の開催にも意欲を見せた。
奥村代表取締役は「広大な土地の確保や、地域の水産事業者と連携できるのが決め手。国内養殖場のフラッグシップ(旗艦)として展開し、地域の方と一体となって活性化に貢献できれば」と話した。