
【南牟婁郡】三重県熊野市久生屋町の作家・中田重顕さん(82)による平和講演が12日、御浜町志原の町立御浜中学校で開かれた。沖縄戦体験者の証言を基に、戦争の悲惨さと平和の尊さを訴えた。
旧満州出身の中田さんは2歳の時、父の病気で同市に引き揚げた。戦後は公立学校の事務職員として働きながら、戦争を題材とした執筆活動を開始。取材で得た証言の継承活動にも取り組む。
講演では、沖縄戦で私立昭和高等女学校の生徒として看護訓練を受けた故上原はつ子さんの話を紹介。学徒動員で犠牲になった同級生らは数多いが、上原さんは引き止められて動員を免れた。
同級生の学徒隊が看病に当たったのは、県出身の隊員らで編成された第62師団。武器や食料に乏しい「見捨てられた軍隊」で、負傷者は「この子たちの看病後に亡くなった」と説明した。
戦渦が長引く中、複数の学徒が戦死し、犠牲者は「梯梧之塔」に刻まれている。上原さんは「沖縄の犠牲者は兵隊だけではない。女学生も同様に死んでいる」と中田さんに訴えていたという。
沖縄戦では県出身の2600人以上が犠牲となり、紀南地域の兵隊約100人も含まれる。中田さんは「再び戦争が起こるかは次の世代の君たちで決まる。平和な世界を考えてほしい」と願った。
2年生は4月に2泊3日の沖縄旅行で梯梧之塔を訪ねるといい、赤阪大翔さん(14)は「町民も犠牲になったと初めて知った。日本のために命を落とした人々に感謝の意を伝えたい」と話した。