2025年1月3日(金)

▼「去年今年貫く棒のごときもの」は近代俳句の基礎を築いた高浜虚子76歳の作。去年と言い今年と言って、人は時間に区切りをつけて生きているが、一瞬にして昨日は去年に、今朝は今年となる。いくら人間が区切りをつけても、時は一本の棒のように過去、現在、未来を貫いている

▼情景を客観的に切り取る虚子の代表作で、句の意味、解釈は難解としても、思い当たることは日常、しばしばではないか。明けましておめでとうございます。知人にそうメールして、元日にふさわしい明るい日差しの正午、心機一転のいくぶん清浄な気持ちになっている時、メールが鳴った

▼「当選確定しております。大至急、ご確認してください」。時節柄「お年玉宝くじ」と銘打った違いはあるが、昨年もたびたび届いた特殊詐欺のたぐいだろう。1等3億円から5等5千円までを確定するから早急に連絡を、の趣旨。新年最初のメールがこれで、午後8時に再び着信した。貫く棒を実感させられる

▼特殊詐欺被害は毎日のように報じられた。SNS(交流サイト)で、手口は多様化、巧妙化、暴力化し、組織は複雑化、分散化して、取り締まりの一歩先を行く。“当選確定”の連絡を受けるたびに、鼻先で笑いながら、もし本当だったらという思いがちらっと頭をかすめる

▼有料サイトの未払い請求をハガキで受けた時も、そんなバカなと思いながらわずかな不安は残る。人は弱いものだと感じさせられる。「棒のごときもの」―棒は曲がらぬ信念を表しているというが、到達は容易ではない。