2024年12月4日(水)

▼「闇バイトはアルバイトではなく、紛れもない犯罪」と県議会で難波正樹県警本部長。言わずもがなだが、本紙指摘通り、ソフトな呼称を用いることで深刻な犯罪へ踏み込むハードルを下げている側面は否定できない

▼援助交際という呼称が、売春の持つ暗く、陰湿なイメージを一新し、明るい日の光のもとに引き出した。一気に低年齢層に広げる役割を果たしたとされている。県で取り上げられたのは「カラ出張」。出張したことにして旅費などを裏金としてプールし、職員などの飲食費に充てられた。「カラ出張と言うと犯罪性は薄れるが、実質公金の横領ではないか」と議会に追及された

▼しかし、裏金は議会の運営の中にもさまざまな形で浸透し、決算認定が出せなかった経緯もある。カラ出張が盛んだったころ、「カネのつくり方ぐらいは知っている」という言葉を複数の職員が誇らしげに言っていた。悪いことをしているなどという意識はほとんどなくなっていた

▼「オレオレ詐欺」の呼称も、犯罪の態様を分かりやすく表している半面、手口の悪質性を覆い隠しているニュアンスがある。かつて豚コレラ、狂牛病と言われた疫病は、学術的に問題があるとして豚熱、牛海綿状脳症(BSE)などに変更されたが、確かに病気の持つ恐怖が和らげられた

▼闇バイトは、高校生の50人に1人が「応じる」と回答し、低学年に拡大する気配。県警は非行防止教室で実態を周知して食い止める構えだが、難波本部長も「闇バイト」の呼称を使う。ハードルをあげるのは難しそうだ。