2024年5月5日(日)

▼こいのぼりといえば、このところ大量にひるがえる姿が話題になってきた。三重県熊野市の七里御浜海岸では、一本のロープに約250匹を取りつけたこいのぼりが知られる

▼熊本県小国町の杖立温泉では3500匹のこいのぼりが立ち、高知県いの町では、水にぬれても破れない特産の和紙で作られたこいのぼりが仁淀川に放流される。能登半島地震の被災地、石川県珠洲市でも、例年「大谷川鯉のぼり川渡し」が有名だが、今年は中止になったようだ

▼最近始まった出来星の行事から40年続くという七里御浜海岸まで、起源はさまざまだが、今日ではいずれも観光目的になって一定の効果をあげているのはこいのぼりを揚げる家庭が激減したことも一因だろう。一説によると江戸時代、男子のいる武家が旗指物を飾る習慣があり、商人が対抗とはばかりでこいのぼりを揚げるようになったといわれる

▼昭和までは男子が生まれると祖父が喜んで、さっそく庭に近隣にみせびらかすようにこいのぼりを立てた。高さを競い、泳がせる数を競ったといわれる。核家族化が進み、アパートなどの庭のない住宅事情が重なり、そんな習慣を許さなくなり、見栄の張りようをなくしたとされる。保険料はじめ高齢者の負担が増え、経済的に余裕がなくなったことも一因に違いない

▼物価の急上昇が追い打ちをかける。仁徳天皇は民家から煙が昇っていないのを見て貧しい暮らしを知り、税を免除したという。空にはためくこいのぼりが消えて、令和の為政者は何かを悟るのだろうか。