元県職員に退職金返還命令、贈収賄事件で県企業庁

三重県企業庁発注工事を巡る贈収賄事件で、企業庁は29日、受託収賄罪で起訴された元北勢水道事務所浄水部副参事兼水沢浄水場長の小野弘春被告(60)に対し、退職手当の全額を返還するよう命じる処分を出したと発表した。

企業庁によると、小野被告は令和4年3月末で退職したが、企業庁の幹部でつくる懲戒審査委員会は小野被告の起訴を踏まえて「現職であれば懲戒免職相当」と判断。退職手当に関する条例に基づき、返還を命じる処分を決めた。

処分では、3月22日までに退職手当の全額を返還するよう命じている。山口武美企業庁長が28日夜、小野被告を企業庁に呼び出して退職手当の返納命令書を手渡した。小野被告は全額を返還する意思を示したという。

企業庁は「浄水場長として部下の職員を指揮監督すべき立場の元職員が受託収賄罪で起訴された事実を重く、深刻に受け止めている。コンプライアンス・ミーティングや職員研修を実施するなどし、県民の信頼回復に取り組む」としている。

一方、返還を命じた金額は「(小野被告の)最低限のプライバシーを守る必要がある。過去の事例でも公表していない」として明かしていない。公表しない根拠となる規定などについては「すぐには見当たらない」としている。

起訴状によると、小野被告と元県伊勢農林水産事務所課長の酒德和也被告(58)=懲戒免職=は令和3年7月、入札の資料作成で助言する見返りに土木工事会社元社長、新井政智被告(46)から現金200万円を受け取る約束をしたとされる。