三重登場の小説など紹介 津で郷土会研究会

【講演する松嶋氏(右)=津市大門の津中央公民館で】

【津】三重県内の歴史や民俗を調査研究する三重郷土会(会長・西川洋三重大名誉教授、会員200人)はこのほど、津市大門の津中央公民館多目的ホールで研究会を開いた。郷土の文学や人物を研究する2氏による講演があり、会員ら約80人が聴講した。

三重文学協会理事の松嶋節氏(75)=同市高茶屋小森町=は「文学に現れる三重の地 物語りの中の三重を読む」と題して、梶井基次郎の「城のある町にて」、松本清張の「眼の壁」、井上靖の「考える人」など作中に三重が登場する作品を紹介し「作品に三重が出てくると近しくうれしい」と述べた。

中でも吉村昭(昭和2―平成18年)に注目し歴史小説「大黒屋光太夫」や「朱の丸御用船」などの著作を解説。「史実が刺激になり創作の引き金になった」「事実を作者の頭がろ過し抽出してこそ、そこに小説が生まれる」など吉村が後書きやエッセーに記した言葉を紹介した。

また、武四郎に学ぶ会会員の森川正美氏(72)=同市白山町=は「上出又吉とその人脈」と題し、津市一志町出身で明治維新直後に北海道で興業し大成功を収めた上出又吉について、松浦武四郎らとの関わりを軸に紹介した。

同会は昭和22年設立。研究会や現地見学会のほか毎年「三重の古文化」を発行している。