東京マラソンでラストラン NTN齋田「感謝の走りを」 三重

【競技生活を振り返るNTN・齋田】

東京マラソンでラストラン NTN齋田「感謝の走りを」 三重
3月3日に開催の東京マラソンで、NTN(三重県桑名市)の齋田直輝=南伊勢町出身=が約20年の競技人生に幕を下ろす。中学時代出場した全国都道府県対抗男子駅伝を皮切りに各年代の主要駅伝を走ってきた30歳は「ここまで続けてこられたのは支えてくれた人へのおかげ。走りで感謝の気持ちが少しでも伝われば良い」と話す。

「ドベ2」で始まった競技人生だ。宿田曽小1年時、校内マラソン大会で最下位から2番目でゴールし「ドベになったら自分の存在価値がなくなる」と奮起した。次の日から「家から1キロ先の店まで走り、タッチして帰る」日課が始まった。

「台風の日も走ろうとして親に止められた」ほど練習に没頭。5年で校内1位になったことを機に地元の陸上クラブに入り本格的に競技者の道へ。南勢中時代県内トップクラスの選手に成長すると、全国高校駅伝常連校の上野工などが統合して2009年に開校した伊賀白鳳に1期生として入学。高2で都大路5区8位の成績を残した。

明治大進学後は全国から集まるレベルの高いチームメートに練習で「ぼこぼこ」にされ続けた。それでも「地元の友達、陸上部の皆、高校時代の下宿先のご家族に箱根駅伝を走ると約束して出てきた」。「ただじゃ終われない」と気持ちは折れなかったという。

3年の冬以降各種目で軒並み自己記録を更新。4年で大学3大駅伝デビューを果たすと、郷土の三重を走る秋の全日本大学駅伝では5区3位の好走を見せた。母校の総合順位を6位に押し上げてシード権獲得に貢献すると、NTN現ヘッドコーチの北岡幸浩選手らと安芸路を走った南勢中時代から憧れてきた実業団選手になるきっかけもつかんだ。

【2022年の中部実業団駅伝で3位でゴールするNTN・齋田(NTN提供)】

16年春のNTN入社後はおもに駅伝が主戦場。今年元日、3年連続59回目の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)出場を果たしたチームを支えた。16年以来の上位入賞を果たした22年秋の中部実業団駅伝ではアンカーを務めて3位でフィニッシュ。伊賀白鳳時代の後輩の坂田昌駿、辻野恭哉にゴールで迎えられた時は「『エモい』瞬間だった」。

現役引退を考えるようになったのはチーム最年長として迎えた昨年。慢性疲労から来る自立神経失調症を発症し、夏場思うように走れなかった。5区を任された今年1月のニューイヤー駅伝は区間39位と振るわず、チーム順位も31位と低迷したことで今季限りで競技生活に区切りをつける決心がついた。

引退決定を打ち明けると「悔いなく終わってほしい」と受け止めてくれた人が多かったという。現役最後のレースにマラソンを選んだのは「自分の中で完全燃焼していないと思う競技だったから」。「どうせ走るなら国内最高峰の大会で走りたい」とエントリーした東京マラソンで目指すのは、高校の後輩、辻野の持つ男子県記録(2時間9分39秒)。「悔いなくスタートラインに立てる状態にしたい」と準備に余念がない。


東京マラソン 男子マラソンのパリ五輪代表選考レースの1つで日本陸連の定めた資格を有し、設定タイム2時間5分50秒を突破した最速の選手が代表に決まる。NTNからは、東京マラソンと同じ五輪選考レースの大阪マラソン(2月25日)に●下拓斗、小森稜太、横澤清己も出場を予定する。