2024年1月24日(水)

▼伊勢新聞社に入社して間もない頃、東京で世話になった同業の先輩から家族で伊勢志摩旅行をしたいので宿の手配を頼むと言われてはたと困った。勘定はこちら持ちのようだからで、そんな余裕はない。廃止が迫っていた県の保養施設を県職員並みの料金にしてもらうよう頼み込んで案内したら大いに不評で、地元国会議員に連絡をしていたと思ったら翌日高級ホテルに移っていた

▼車も運転手付きで回してもらったらしい。“実力”のほどを垣間見た思いで目をぱちくりした。官房機密費が問題になった時、宮沢内閣の官房長官だった加藤紘一氏の「金銭出納帳」という内部文書を共産党が公表した。高名なジャーナリストへの香典や、政界への辛口評論で知られる著名な記者の出版記念パーティー会費などというのがあった

▼報じられた記者は「まさか官房機密費から出ていたとは」とコメントして「やはり新聞記者が出版記念パーティーなんかするものではない」と言ったのが、晩節をけがされて悔やんでいるように聞こえて、愛読者の一人としては気の毒な思いがするとともに、粛然とした

▼自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金問題で、起訴を免れたせいか同派幹部らが自身への還流額を明らかにし始めた。萩生田光一前政調会長は5年間で計2728万円。使途は海外出張時の支出など政治活動費や、国会議員、外国要人をはじめ「報道関係者らとの会合」

▼「ら」には「有識者」が入るようだ。その文字に釘付けになり、しばし目を離すことができなかった。