へき地医療強化へMaaS活用 鳥羽市が実証調査、車で遠隔診療や患者移送 三重

【オンライン診療でモニター越しに医師と話す住民(右)=鳥羽市石鏡町で】

【鳥羽】三重鳥羽市はへき地の医療提供体制を強化するため、石鏡町と浦村町を合わせた鏡浦地区を対象に医療MaaS(マース)診療車を活用した実証調査に取り組んでいる。医療機器などを積んだ車に看護師が乗り込んで患者の自宅近くに出向き、オンラインで診療所の医師とつないで遠隔で診療するほか、必要に応じて患者を診療所に移送する。実証調査は3月末までの予定で期間中に課題を洗い出し、本格導入を目指す。

市によると、鏡浦地区には浦村町本浦地区にある市立鏡浦診療所のほか、石鏡町と浦村町今浦地区にそれぞれ分室を設置しているが日替わりで開設し、午前と午後で医師が移動するため、診療時間が短くなっているという。

そこで、医師が効率的に広範囲をカバーし、各地区の診療機会を増やす取り組みとして、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社「モネ・テクノロジーズ」などと連携して昨年12月から実証調査を開始。地域に診療車が出向き、鏡浦地区でも診療を行う神島診療所の小泉圭吾医師がオンライン診療を実施している。

今月中旬、石鏡町の漁港近くに止まった診療車に宮本理さん(74)が乗り込み、看護師が血圧や体温、酸素飽和度を測定した。電子聴診器による心音や外部接続カメラで患部を撮影した映像などは診療所にいる医師に送られ、情報を共有できるという。モニターに映る小泉医師が心音を確認し、「体調はどうですか」などと質問。宮本さんは血糖値について相談していた。

オンライン診療を終えた宮本さんは「診療所で先生と話しているようで違和感はなく、便利だと思った」、小泉医師は「マースの有用性を皆さんに理解してもらえれば診療へのアクセスがよくなる。診療所に行きたくても行けない人が多いという課題を解消できれば」と話した。

市健康福祉課の中村孝之係長は「診療所に行けない人に使ってもらい、地域に根ざした医療につなげていきたい」と期待を寄せた。