矢守一声の多芸多才な彫刻作品 三重県立美術館で特集展示

【矢守一声の彫刻が並ぶ会場=津市大谷町の県立美術館2階で】

【津】三重県津市出身の彫刻家、矢守一声(やもりいっせい)(明治14―昭和36年)の特集展示が10日、同市大谷町の県立美術館2階常設展示室第2室で始まった。地元で大切に受け継がれた作品約40点を紹介する。3月31日まで。観覧料一般310円。月曜と2月13日は休館(2月12日は開館)。

矢守氏は明治37年東京美術学校(現・東京芸術大)塑造科から研究科に進み、在学中から展覧会に出品するなど東京を中心に活動した。30代半ばに三重に戻り県工業試験場などで技手を務めながら、津市の平治煎餅本店や旧三華堂など地元菓子店の支援を受け自身の制作を続けた。

今展は作品の所有者からの働きかけをきっかけに同館が足跡を調査し実現。カニを題材にした陶の置物、細かな細工を施した木のたばこ入れや菓子箸、大きなまぶたが特徴的な縁起物の「福神」もある。

高さ約80センチと出品作品の中で最も大きい像「水難三十六童女冥福祈願観音」は、昭和30年の橋北中水難事故の翌年に制作され市内の密蔵院に奉納されたものだという。

【矢守氏が制作した「水難三十六童女冥福祈願観音」】

担当の原舞子学芸員(41)は「当時三重から東京芸術学校に彫刻で進んだ人は大変少ない。多芸多才で扱う素材もさまざま、1人の創作とは思えない種類の多さ。津で生まれ津で活動した彫刻家を知る機会になれば」と来場を呼びかけた。