2023年12月10日(日)

▼「サルでもわかる〇〇」というフレーズは、多くの参考書や入門書のキャッチコピーに使われている。「サルは毛が三本足りない」ということわざもある

▼いずれもサルは賢いが、人間ほどではないという認識が前提。後者には、サルも人間もそう違わないというおごりへの戒めもある

▼県立くわな特別支援学校の50代の女性校長が障害のある生徒への接し方を犬のしつけにたとえて教員を指導し、厳重注意された。処分も検討されているという

▼福永和伸教育長が「決してあってはならない」と陳謝し「子どもを尊重し、信頼される学校となるよう危機感を持って取り組む」。障害のある生徒を犬にたとえたことについてだろう。匿名の投書も「校長が生徒をまるで犬のように扱っている」。錦織厚史人権教育監も「子どもたちの人権を尊重していない意識が結果的に表れている」

▼なるほど校長は教職員らに謝罪。「飼っている犬が指導の参考になると思った。人権に対する意識を理解できていなかった」。指導された女性教員はそれから六カ月後の3月、退職した。指導との因果関係は「確認されていない」

▼約40年前、近代的経営とされる日本IBMの役員から転じた鳥羽市長が職員が無能だとしてキツネやタヌキなど動物にたとえて非難し、逆に議会から反撃されて、一期で退陣した。人間を動物にたとえることは、その人間をからかったり、軽くみる話法だったが、いまやその奥の意識にも、気を配らなければならない世の中になった

▼県教委と校長との認識の温度差は、その過渡期ということかもしれない。