2023年12月6日(水)

▼全国でクマの目撃情報や被害が報告されているが、三重県でも相次いでいることが中野敦子県農林水産部長の県議会答弁で分かった。例年よりも速いペースで、人身事故も発生しているという

▼一見勝之知事がやはり県議会の答弁で、獣害対策を強化する関係部局会議を開くよう危機管理統括監に指示したことを明らかにした。また後手に回っているような感覚に陥るのは、人身事故情報がほとんど初耳だからだ。質問者である伊藤雅慶議員は出没情報が記録のある平成18年度以降最多の37件だとして「痛ましい事故がないよう」対応を求めたが、時すでに遅しにならぬか

▼クマを巡っては県に苦い経験がある。平成27年、イノシシの罠にクマがかかった。滋賀県の山中に運んで放ったが、滋賀県に報告はしなかった。その10日ほど後、付近の高齢の女性がクマに襲われ、大けがをした。慌てて放ったことを連絡したが、同県にはそれまでクマ被害はほとんどない。県が放ったクマに違いない、すぐ連絡してくれれば対応の仕方もあったのに、と強い不快感を示された

▼後にどうやら“クマ違い”らしいとなったが、肝心のクマは発信器を付けたのに探せない。2年後に射殺され、当時の鈴木英敬知事が「ご迷惑をかけまして」と謝りに出向いている。今度人身事故が起きれば“人災”になるのではないか

▼年末はまたイノシシの活動が激しくなる季節だ。行政は防御の方法は教えてくれるが、費用は個人負担。せっかく農林水産部以外の知恵を結集しようという関係部局会議だ。個人の難渋にも目を向けてもらいたい。