住宅地31年連続下落、商業地も32年連続で 三重県内の基準地価 工業地は2年連続で上昇

【住宅地の価格が18年連続で県内1位の津市大谷町】

三重県は19日、令和5年の基準地価を発表した。県内の平均変動率は住宅地が31年連続、商業地が32年連続で下落し、工業地は2年連続で上昇。住宅地と商業地の下げ幅は2年連続で縮小した。調査に当たった不動産鑑定士は「経済活動の活発化を背景に、地価の回復が一段と進んでいる」と話している。

県によると、基準地価は都道府県が毎年7月1日時点の地価を公示する制度。土地の取引や固定資産税の算定などで目安となる。今年は前年と同数の317地点を37人の不動産鑑定士が調べた。

■住宅地

平均変動率はマイナス0・5%で、下げ幅は0・5ポイント縮小。全国順位は8つ上げて27位となった。前年は32地点だった上昇地点は56地点に増加。下落地点は134地点で22地点減った。

1平方メートルあたりの平均価格は2万8100円で前年と同額。最高価格は津市大谷町で10万3千円。「県を代表する高級住宅地」(不動産鑑定士)で18年連続トップだが、近年の上昇率は鈍化している。

市町別の平均変動率は四日市、津、鈴鹿、亀山、朝日の5市町が上昇。上昇した市町が現れるのは4年ぶりとなる。下落した市町は前年より4市町少ない23市町。下落幅が拡大した市町はなかった。

■商業地

平均変動率はマイナス0・1%で、下げ幅は0・7ポイント縮小。全国順位は2つ上げて25位。前年は9地点だった上昇地点は34地点に増え、前年は55地点だった下落地点は37地点に減った。

1平方メートルの平均価格は前年より400円高い6万2600円。最高価格は四日市市安島1丁目で、3・7%(1万1000円)増の30万6千円。基準値となった平成23年から13年連続でトップとなっている。

6市町で平均変動率が上昇。駅前のマンション需要などを背景に四日市市と桑名市が2年連続で上昇したほか、鈴鹿市と菰野町は32年ぶり、亀山市は31年ぶり、津市は4年ぶりの上昇となった。

■工業地

平均変動率はプラス1・5で、上昇幅は0・6ポイント拡大した。全国順位は3つ上げて19位。調査した15地点のうち、上昇したのは13地点で前年より4地点多い。31年ぶりに下落地点はなかった。

1平方メートルの平均価格は1万9800円で、300円上昇。最高価格は桑名市江場で0・9%増(400円)の4万2800円。国道23号へのアクセスの良さなどから、33年連続で県内トップとなっている。

市町別では、調査対象となった12市町のうち10市町が上昇した。残る伊勢、名張両市も横ばい。津市や四日市市などの8市町が2年連続で上昇。桑名市は33年ぶり、松阪市は31年ぶりに上昇した。

県地価調査分科会の代表幹事を務めた片岡浩司不動産鑑定士は「昨年からアフターコロナへの期待感が高まっているが、今年は相場より高い価格での取引が目立つなど、地価の上昇が力強い」と話す。

住宅地は「堅調な動きが続き、上昇局面に差しかかっている」としつつ、平均変動率の下落が続いている理由については「南部では高齢化や過疎化によって買い手が限られ、慢性的に需要が少ないため」と話す。

商業地については「新型コロナの影響を特に受けていたが、横ばいに近い水準まで回復してきている」と説明。「客足の回復を見据えて飲食店を出そうとする需要もあり、今年は改善の動きが強い」という。

工業地については「新規の設備投資など、物流以外での需要も見られるようになってきた。高速道路のインターチェンジに近い工業団地が少ないことも、地価を引き上げる要因になっている」と話す。

また、リニア中央新幹線の影響は「開通を見据えて工業団地への注目が集まっている」と説明。亀山市内に出店予定の会員制大型量販店「コストコ」は「地域の発展が期待される要因の一つ」と語った。