鳥羽の海の現状知って 絶滅危惧種など、市がレッドデータブック発刊 三重

【「鳥羽市海のレッドデータブック」を紹介する岩尾さん=鳥羽市役所で】

【鳥羽】三重県鳥羽市は絶滅のおそれのある海の野生生物の調査結果をまとめた「鳥羽市海のレッドデータブック2023」を発刊した。絶滅種や絶滅危惧種、準絶滅危惧種など計419種を掲載。市観光商工課によると、海の現状を把握し、豊かな資源を守っていくための基礎資料として活用していくという。

令和2年、市水産研究所が坂手島から小浜町に移転したことをきっかけに、市内の沿岸や流入河川などで海の生物のモニタリング調査を実施し、多くの人と調査結果を共有するため、レッドデータブックを作成した。各分野の専門家13人が調査や執筆を行い、地元の海女や漁師、大学、水族館など個人や団体も協力した。

A4判、298ページ。脊椎動物18種、魚類30種、貝類295種、甲殻類34種、その他無脊椎動物群21種、海藻・海草類21種をカテゴリー分けし、写真とともに選定理由や現況、減少要因、生態を詳しく解説。コラムやレッドデータブックの内容に関する質問と回答、調査の様子を撮影した写真なども掲載した。

同課によると、今回の調査では鳥羽の海で初めて、ハゼ科の「タビラクチ」(絶滅危惧ⅠA類)、カジカ科の「ウツセミカジカ」(同)などの生息が確認された。レッドデータブックに海藻・海草類が掲載されているのも珍しいという。

価格は税込みで7700円。海の博物館(同市浦村町)の館内と同館オンラインショップで販売する。市立図書館でも閲覧や貸し出しが可能となる。海洋教育の推進を目的に、市内の小中高校にも配布する予定。

調査や執筆を行った同研究所の岩尾豊紀研究員は、食用とされている生き物も掲載されていることに触れ、「『採ったらいかん』ではなく、レッドデータブックに載ることで採り方や売り方、保全について考えるきっかけになる」と話した。

中村欣一郎市長は「鳥羽の今の海の豊かさを知り、なおかつ危機が迫っているという心配な部分も知らなければいけない。海洋生物の保全を訴える冊子として幅広い分野で活用してもらえれば」と期待を寄せた。

問い合わせは同課=電話0599(25)1157へ。