「逃げろと言えなかった後悔」 丹野氏、東日本大震災の経験談 津で防災講演会

【震災の経験について話す丹野祐子氏=津市香良洲町のサンデルタ香良洲で】

【津】みえ防災コーディネーター津ブロックと県建設技術センターは10日、津市香良洲町のサンデルタ香良洲で防災講演会を開き、市内から約160人が参加した。講演会で宮城県名取市閖上(ゆりあげ)の一般社団法人「閖上」の丹野祐子氏(54歳)が「東日本大震災が教えてくれたこと」と題し話した。

丹野氏は嫁ぎ先である名取市閖上で東日本大震災を経験。長男と義理の両親を亡くし、その後立ち上げた閖上中学校遺族会のメンバーとともに子どもたちが生きた証しを残すために慰霊碑を建立。現在まで震災を伝える語り部として活動している。

講演で同氏は、約3分続いた強い横揺れと、最大波高9メートルの津波により閖上の町が全壊し750人が犠牲となったことや失った長男への想い、復興する町の中で当時の震災を語り継いでいく活動について話した。

地震の直後に津波が来ることを想像できなかったという同氏。「人間は過去の経験を想像することができるが、見たことがないものを想像するのは苦手」「あの時逃げろと言えなかった後悔が今の自分の活動につながっている」と強調し、来場者らに「まずは自分の命、次は大切な人の命を守れる人でありたい」と伝えた。

主催のみえ防災コーディネーター津ブロックの徳田順胤代表は「講演を通して多くの方が震災を知り、防災を意識してもらうきっかけとなれば」と話した。