モンゴルへの関心訴え 静岡大の楊教授、伊勢新聞政経懇話会で講演 三重

【伊勢新聞政経懇話会で講演する楊教授=津市大門の市センターパレスホールで】

伊勢新聞政経懇話会が19日、三重県津市本町の市センターパレスホールであり、静岡大人文社会科学部教授の楊海英(よう・かいえい)氏が「モンゴルから見た中国・日本・ロシア」と題して講演した。楊氏は内モンゴル自治区について、「国籍は中国だが『モンゴル人』との認識だ」と強調。内モンゴルを含めたモンゴルについて、日本と関係が深いにもかかわらず日本人にはあまり知られていないと指摘し、関心を向けるよう呼びかけた。

楊氏は内モンゴルの歴史に触れ、満州国の成立で、中国と日本の二重の植民地となったと説明。満州国については、遊牧民の生活を尊重するなど保護政策を取っていた一方、中国は草原の農地化を進め、それが砂漠化など環境破壊につながったとした。「日本の統治の方がはるかにましだったというのが、近代知識人らの共通認識だ」との考えを示した。

中国の植民地化政策については、大量の移民を送り込むことで、先住民より優位に立つ「砂を混ぜる政策」だとし、「中国の最大の武器は先端機器などではなく、人口だ」と指摘。その結果、内モンゴル内のモンゴル人の割合は17%にまで低下したとした。

また、文化大革命時には34万6千人が逮捕され、2万7900人が殺害されるなど、虐殺や拷問が繰り広げられたと主張した。

最近では、モンゴル語での教育が削減されているとの危機感を示した。その上で「日本人はモンゴルといえば相撲だが、モンゴルにとって日本は宗主国といっても過言でない」と述べ、日本への期待感を示した。

楊氏は南モンゴルのオルドス生まれ。北京第二外国語学院大日本語学科卒業。89年に来日し、総合研究大学院大博士課程修了。2000年に日本に帰化し、06年から現職。専門は歴史人類学。著書に「墓標なき草原|内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録」(岩波現代文庫)などがある。