2023年5月23日(火)

▼伊勢志摩サミットから7年。鮮烈さこそ今に残るが、何が行われたかというと、当時の安倍晋三首相が伊勢での開催にこだわったこと以外、ほとんど記憶がない

▼広島サミットはその点、ウクライナ侵攻を続けるロシアの核兵器使用が懸念される中で被爆地にこだわっての開催。意義は明白だが、被爆者団体からは不評。まるで岸田文雄首相だと言っては言い過ぎだが、武器供与の話はこの地でしてほしくなかったという被爆者の言葉は重い

▼議長国として岸田首相の顔が米誌『タイム』を飾ったという話の経緯も象徴的な気はする。近影は上目遣いで策謀家の趣というのは報道評だが、記事の表題は当初、岸田首相が「長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる」

▼記事は「世界3位の経済大国に見合った軍事的影響力を持つ国にしようとしている」で、捨て去るなどの言葉はない。駐日米大使には祝意を示されたが、日本政府は表題の違和感を働きかけ、電子版は平和主義の日本に「国際舞台でさらに積極的な役割を与えようとしている」へ変えたという

▼インタビューはタイム誌のシンガポールから来た記者だという。かつて進駐した東南アジア各国の漠然とした認識が、表題に現れたのだろうか。少なくとも、最初の表題で伝えて違和感はなかったのだろう。憲法の解釈変更や敵基地反撃能力など、日本人でさえひところ考えられなかった言葉が飛び交う

▼「核兵器のない世界」を目指す岸田首相の理念と防衛力強化が指摘されている。考えされられることの多いサミットではあった。