東教諭、昴学園で挑戦 高校野球・白山下克上V監督が転任 三重

【昴学園監督の高橋教諭(右)は東教諭が上野を率いて夏の県大会で4強入りした2010年当時の野球部主将。「本当に野球が好きやし一生懸命やる。春の県大会出場は本当にあいつの頑張りやと思っています」】

白山高校(三重県津市)の野球部前監督の東拓司教諭(45)がこの春の教職員人事異動で昴学園高校(大台町)に転任した。上野の監督時代に夏の三重県大会でベスト4進出。前任校の白山では10年連続初戦敗退から鍛え上げ、2018年に学校初の優勝を果たした。過疎化の進む県南部の盛り上げも願い、16年連続夏の県大会初戦敗退の昴学園で指導者として新しい挑戦を始める。

4月初旬。春休みの昴学園グラウンドで野球部が久居高校と練習試合を行っていた。3月に行われた南地区2次予選を勝ち抜き創部初の春の県大会出場を決めたばかり。静かな山間に響く球児の元気な声に誘われて、地域のお年寄りも足を止めて試合に見入る。「(練習試合の相手は)大阪桐蔭かって聞かれるんです。来るわけがない」。ちゃめっ気たっぷりに話す東教諭が力を込める。「高校野球の熱はやっぱりすごい」

周囲を巻き込む高校野球の影響力は前任校の白山時代に実感した。グラウンドの草むしりから始めた着任当時は孤軍奮闘が続いたが、公式戦で結果を残すたびに学校の内外で支援者が増えていった。18年夏の全国高校野球選手権初戦で愛工大名電(愛知県)に挑んだ時は甲子園の応援スタンドが約2千人で埋め尽くされた。

白山への赴任から10年が経ち、次の異動先を考える中で、上野時代の教え子、高橋賢監督(30)が野球部を率いる昴学園が浮上した。1995年創部の野球部は部員不足に悩む時期もあったが、2019年に高橋監督が就任した後、年々部員が増加。全寮制の特色を生かして、県外の硬式野球経験者も受け入れており、この春総勢36人の大所帯となる見込みだ。

【昴学園3年の堀田竜寿主将(左から2人目)は名古屋市出身。「寮設備があって環境が良い」と進学を決めた。「目標だった春の県大会出場が決まりすごくうれしかった。夏の県大会はベスト8を目指していきたい」=大台町の同校で】

2年前には地元住民らによる昴学園野球部を応援する会が発足。公式戦の応援に駆けつけるほか、今年春の県大会出場を決めた後は部員にケーキを差し入れるなど物心両面で野球部を支えてくれている。地域の期待を肌で感じながら「地元でいろんな人に応援してもらって甲子園に行くのが一番良い。そういう行き方を自分はさせてもらったから、次はその恩返しのつもりでやりたい」と話す。

「何年かかるか分かりませんけど、いつか甲子園まで本当に行けたら、最高ですね」―。その一方で、今年夏の県大会までは副部長の立場で高橋監督のサポートに徹する。自分の背中を追うように、当時4人の野球部員とグラウンド整備から始めた教え子とは常に連絡を取り合い、励ましてきた。「春の県大会出場は高橋の頑張りの結果。ぜひ夏も1勝して昴学園の歴史を変えてほしい」。