2023年4月4日(火)

▼桑名市東方の大福田寺で恒例の「火渡りまつり」があり、4年ぶりに稚児行列が復活し、新小学1年生約130人も靴を履いたままだが、はしごに沿って護摩木の上を歩き、無病息災を願った。旧長島町だが同じ桑名市で住宅火災が発生し、焼け跡から3人の遺体が見つかったのは遺憾。その起源・来歴から「無病息災」の筆頭に防火思想があったのは間違いない

▼火の神は世界中に存在する。日本神話では、イザナミとイザナギが神生みで誕生した火の神ヒノカグツチがいて、その火でイザナミは亡くなる。火を扱うことの恐れと崇敬となり、火事を統御する神としてまつられてきた。江戸の三大火は冬から春先にかけて発生した。木造家屋が多い日本は火事に敏感で、現実問題としても注意は必然だった

▼古代ギリシアでも火は神聖なものとされ、古代オリンピックで聖火として各宮殿にともされた。現代は聖火リレーとなり、ヨーロッパ文明の後継というヒトラーの思想に沿ってベルリン五輪から始まった。火の二面性の教訓でもあろう

▼火渡りも、炭火の熱伝導率が低く、一定の歩調なら、はだしでもやけどはしないが、たじろいだり慌てたりすると危険はあるという。一般の参加も認める寺では、必死の形相で渡っていくという。心頭滅却すれば火も自ずから涼し

▼オール電化で火の用心の思想は薄れたが、油断が全てを焼き尽くす恐ろしさは変わらない。仏教では「貪りと怒りと無知」を心の炎とし、火渡りはそれを抑えるという。現代人にとって遠い存在になりつつある火の用心を改めてかみしめる神事である。