世界の注目新種トップ10に選出 鳥羽水族館採集のイソギンチャク 三重

【「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10」に選ばれたヒメキンカライソギンチャク(右)。ヤドカリ(左)のすむ巻き貝に付着し、共生関係を築いている(鳥羽水族館提供)】

【鳥羽】三重県鳥羽市の鳥羽水族館が熊野灘深海で採集し、令和4年に新種のイソギンチャクとして論文が学術誌に掲載された「ヒメキンカライソギンチャク」が、同年の「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10」に選ばれた。

同トップ10は、国際的な海洋生物のデータベース「国際海洋生物種目録(WoRMS)」が、3月19日の「分類学者に感謝する日」にちなんで毎年選んでいる。同館が採集に関わった生物の選出は今回で2回目。

ヒメキンカライソギンチャクは高さ1―2センチ、幅3―4センチで、分布域は房総半島から紀伊半島にかけての水深100―400メートルの深海底。ジンゴロウヤドカリと共生するだけでなく、ヤドカリがすむ巻き貝の上に付着し、自身の分泌物で増築する生態を持つという。

同館は定期的に熊野灘漸深海帯の生物調査を行い、以前からヒメキンカライソギンチャクを採集していたが、分類学的記載が行われていない未記載種であることが判明したため、東京大学の吉川晟弘特任研究員らとの共同研究で新種として論文で報告し、令和4年4月に米国の学術誌に掲載されていた。

同館の森滝丈也学芸員は「今後も研究者と連携して熊野灘に生息する生物の生態を明らかにし、水族館を訪れる多くの方に知ってもらいたい」と話している。

ヒメキンカライソギンチャクは、同館内のKコーナー「へんな生きもの研究所」で生体展示している。