2023年3月30日(木)

▼立春から春分の日ごろまでは、古くから「木の芽どき」と呼ばれる。気候が暖かくなり、草木が芽吹き、心も浮き立つ時期だが、気候の大きな変化が心のバランスを崩すと警戒を呼びかけられてきた。3月を自殺防止月間としているのも、あながち関係ないことではあるまい

▼春はまた花粉や黄砂の散乱や人事異動、入学・卒業など、自律他律の環境激変の季節でもある。東名阪自動車道上下線で27日、トラックなど五台が絡む衝突事故が発生し、3人が死亡、1人が意識不明の重体。走行車線上に停車していた中型トラックと軽ワゴンの車列に大型トラックが追突した。原因は今後の捜査だが、28、29日付本紙『県下の交通事故』は死者数の増減がなかった

▼県の死者数もひところのワースト更新から大幅に減った。特に昨年は死者ゼロが続き全体を押し下げたが、単純に喜べないのはシートベルト着用や医学の進歩で昔なら即死のケースも延命されるようになったことだ。数日後に亡くなっても、死者数には含まれない

▼東名の事故が数字に出てこないのも土俵が変わったせいかもしれない。24日は津市の信号のない市道交差点で自転車と車が出合い頭に衝突し、自転車の大学生が死亡した。事故のあった午後5時半ごろは昼と夜の間のいわゆるたそがれ時で魔物が住むともいわれる。今の時期、日によって明暗差があり、明るさに慣れた目に突然薄闇から自転車が現れヒヤリとすることは多い

▼春の交安運動は4月。新しい生活環境に合わせてだろうが、自然や人間の摂理からはまた別の視点もあろう。