2023年3月28日(火)

▼特に新事実はなかったようだ。が、商業振興が目的と偽って実体のない団体で補助金をだまし取ったとして津市が元自治会長に損害賠償を求めた訴訟で、昨年9月の津地裁判決は市側が元自治会長の意向を推し量って交付を決めたので、だまし取られたとは言えないと退けたのに対し、控訴審の名古屋高裁は元自治会長が団体設立や補助金手続きなどを主導して市に誤信させたとして全額支払いを命じた

▼要は、一つの事実の見方で裁判所の判断は天地ほどの隔たるということだろう。補助金搾取問題では津市自身、職員が関与したとして64人を懲戒処分にし、訓告などを含め156人。元幹部職員は逮捕されたし、副市長は辞任した。前葉泰幸市長も2カ月分の給与を返納している

▼一審の津地裁は元自治会長と市はグルと見て、両者にだまし、だまされの関係はないとし、二審の名古屋高裁は市が関与していたとしても主導は元自治会長だ、例え仲間同士でも、両者の間に金銭トラブルが生じたら、どちらかに軍配を上げるのが民事訴訟の原則。仲間だったことが、だまし、だまされた関係を否定するものではないと解釈したのかもしれない

▼判断の違いは、そうしたものの見方によっても変わってくるのだろう。一審は問題の本質を語り、二審は、市民の損害を償う相手を決めた、ということなら三審制というのも味をやる。「津市逆転勝訴」と新聞は伝えたが、前葉市長はじめ、コメント好きの津市からは特に反応はないらしい。市長選を目前にして、事件を思い出されたりグル呼ばわりはかなわんに違いない。