2023年3月16日(木)

▼日本の神話や信仰を背景に織り込んでいるという新海誠監督のアニメ「すずめの戸締まり」を見た

▼主人公の高校生、岩戸鈴芽の名前は天の岩戸神話やウズメを連想させる。ウズメは岩戸を閉じて引きこもった天照大神を引き出すが、鈴芽は巨大地震を起こす魔界に通じる戸を、「閉じ師」の大学生と力を合わせ、締めて回る

▼地震を起こす魔物を封じる「要石」が出てくる。要石は伊賀市阿保の大村神社が有名。大国主神(おおくにぬしのかみ)が、海原を照らして急接近した相手に「何者だ」と問うと「俺はお前だ」と答える日本書紀をほうふつさせる場面もある。「神風の伊勢国は、常世(とこよ)(常住不変の国)の浪(なみ)の重浪帰(しきなみよ)する国なり」(同書)の常世も登場する

▼頻出の噴煙柱っぽいのが不気味。九州では大噴火で空高く立ち上がった噴煙の柱が崩れ火砕流となり、シラス台地になった

▼物語の底流に人柱伝説がある。今の自分の幸せが、誰かの犠牲のおかげで成り立っているのだと知る鈴芽。映画を見て、人のために生きようとする若者が現われると私は信じる。