2023年3月5日(日)

▼いじめと虐待は共通する部分が多いが、若干違いも広がっているのかもしれない。心理的暴力が加わって、いじめは被害者の感じ方で認められるようになったが、虐待は親の思いなども考慮されるのではないか。ハラスメント(嫌がらせ)となると、被害者なる側の訴えが認められるのはそう簡単ではない

▼たとえば、フィギュアスケートの元五輪男子代表、織田信成さんが元コーチから陰口などのモラルハラスメント(言動や態度で精神的苦痛を与えること)を受けて関大アイススケート部の監督辞任に追い込まれたと訴えた訴訟で、大阪地裁は織田さんの訴えを棄却。逆に名誉を¥ルビ(毀損,きそん)されたと元コーチが反訴した方は認められて織田さんは220万円の支払いを命じられた

▼報道によると、織田さんは「あいさつを無視されたり、陰口を言われたりする」「リンクに行くのが怖くなって嫌になり」などと訴えたが、判決は「裏付ける客観的資料は存在しない」と退け、元コーチが反訴した名誉毀損については、織田さんの記者会見やブログなどで事実と認められるとした

▼織田さんは自分の主張を裏付ける証拠を集めることができなかったが、相手の反訴を立証する材料はせっせと提供していたことになる

▼密室などが多いハラスメントの証拠を用意するにはそれなりの工夫が必要だろう。鈴鹿医療科学大学の助教が、上司から「教員の資質がない」「他に向いている仕事がある」などの中傷や退職強要、叱責されたなどと津地裁に訴え出て、パワハラやアカハラが認められないと棄却されたのも珍しいことではない。