2023年1月11日(水)

▼行政、企業などに一定割合の障害者雇用を義務づけた法定雇用率を達成するため、便利な「代行」業者が急増しているという。働く場として農園などを用意し、働く障害者もあっ旋。至れり尽くせりで、労せずして法定率を達成でき、障害者もそう仕事をしなくても一定の収入が約束される。一流企業ら約800社が利用している

▼農園は複数の企業が〝雇用する〟障害者が集められ、それぞれの割り当てで作業し、給料は企業から支払われる。その十数倍の契約料が業者に支払われる。貧困ビジネスを連想するが、国も雇用や労働とは呼べないとして対応策をまとめるという

▼専門家が指摘する。「企業の本業に貢献するのが本来なのに、結局は法定雇用率のクリアが目的」(中島隆信慶応大教授)とした上で「多様な人間が働けるように配慮することは企業の成長につながる。『障害者雇用は将来への投資』と意識を変えるべきだ」

▼水増し雇用がバレて法定率達成から未達成に転落した県教育委員会や県警本部などは耳が痛くはないか。1、2年の早期に達成へと復帰したのは代行業者に委託したわけではないが、手口は似ているからだ。少なくても「本業に貢献する」形ではない

▼農園ならぬ草むしりなどの〝新しい雇用の場〟を創設し、非正規雇用などの仕組みをフル活用した。本業を多様な人間で遂行していこうという視点はない。現状を検討・分析し、よりよい仕組みを考えていこうという気はないということである

▼「代行」は新たな障害者差別の温床になるのではないか。県教委、県警本部、そして県もである。