2022年10月30日(日)

▼悪夢のような、ではないが、全国に吹き荒れた産地偽装、表示偽装の嵐がよみがえる。県もその渦中で大きく乱高下した。鈴木英敬前知事が伊勢エビの表示偽装に絡み「ロブスターもおいしいんですが」と言って「偽装を認めるのか」と報道陣に突っ込まれたのもそのころだったか。特に農・漁産物には偽装のぜひも含め混乱もあった

▼中国産や韓国産などのアサリを県産や熊本県産と偽って販売していたとされる県内三事業者はいずれも偽装を認めているという。かつて中国産米や加工用米を国産米、主食用米として販売し、悪質とされた県内米穀商事会社の手口と似ている。産地の追跡や味での選別は難しく、消費者を偽ったことが問題とされた

▼三業者のうち、一業者は漁獲量の減少で外国産を県産として約107トンを販売した。残り二業者は熊本産としてそれぞれ15トンと三トン。県医療保健部食品安全課は「きちんと表示している事業者に迷惑がかかる。厳格に対応したい」。不公正競争という視点が第一で、消費者は二の次ということか

▼今のところ、熊本産と偽装した二事業者には動機を聞き取っていないという。「今のところ」は公務員の場合、とてつもなく長期間のことも珍しくはない。動機の聞き取りにそう重きを置いていないのかもしれないが、質的には、少量も含め、むしろ重大という見方もないか

▼農林水産省は何のためにあるか。北川正恭前知事から問われて「業界の健全な発展のため」と答えて「国民に安全・安心な食料を提供するためさ」と訂正されたことも思い出した。こちらは悪夢ではない。