2022年10月14日(金)

▼差別に苦しむ当事者団体による世界で初めての人権宣言と言われる水平社宣言が採択されて昨年が百周年。この宣言を締めに部落差別の理不尽さを訴えた大作『橋のない川』を書いた住井すゑは、宣言の中の「男らしき産業的殉教者」という描写には怒っていたと、スタッフの一人が語っていた。背景に「女、子ども」への差別意識がうかがえるからである

▼差別意識というのは難しい。ないという人はいないというのが通説でもある。ツイッターに「国葬反対のSNS発信の八割が隣の大陸から」と投稿した小林貴虎県議に対し「差別意識はなかった」とする聞き取り結果を、自民党会派の中森博文代表が県議会代表者会議で報告した

▼県が障害者差別解消条例を制定したのは平成30年。その後担当部門が多目的トイレのない階に移ったり、障害者雇用率を大幅に水増した県教委が、その改善の障害者求人に「介助者なしに勤務」を条件にしたり、採用内定者に身体検査書を義務づけたり。その都度「配慮不足」を陳謝している

▼県は、各庁舎に「ようこそ」などを表す手話の模型を掲示しているが、職員が手話で話すのを見たことがない。視覚障害者の職員も一人もいない。一次試験を通過しても「二次は成績上位十人まで」と地方公務員法違反まがいではじかれたともいう。障害者雇用率達成の陰で、障害種による差別が見えなくなっている

▼法や条例が整備された障害者でさえこうだ。性少数者や外国人問題で「差別意識がなかったと思い込んでいることが問題」などの批判があがったのには、一理も二理もあろう。