大観小観 2022年9月24日(土)

▼県立美術館が開館40周年の記念式典を開き、関係者が祝った。芸術には自他共に許す門外漢だから、速水豊館長の「財政的な困難さや設備の老朽化などを抱えているが、次の40年に向けて発展できるよう努力したい」というあいさつに美術館の置かれた環境への悲哀を感じたのは、むろん何のオーソリティーもない

▼「この展覧会を出発点として、この場が今後県民の創造活動の重要な一翼を担う場として発展していくよう願い、また関係者一同努力を重ねてまいる所存です」というのは昭和57年の美術館開館に伴い、県民ギャラリーオープンを飾る『三重の美術・現代』開催で当時の陰里鉄郎館長のあいさつ。〝発展〟が、片や創作活動で、片や財政や老朽化問題であることに、40年の変遷を物語っている気がしたのである

▼美術館が「財政的な困難さ」に直面したのは、数年前の県をあげての緊縮財政よりずっと以前から。古くは北川県政のハコモノ批判にさかのぼれようが、特に県立博物館建設と歩調を合わせている

▼胃袋定量説というのがある。人気の食物が現われても胃袋が収容できる量は一定だから、それまでの食物の摂取が減るという理屈。県の政策でも見かける仕組みで、福祉の当事者団体なども、注目を浴びる分野が出現するとしわ寄せを警戒する

▼博物館完成で沸く中、美術館の専用運転手が他部門に異動した。倹約、倹約で、異動はやむを得ないとし「岡田文化財団がなければとてもやっていけない」と言った。岡田文化財団などから出席者約80人、という記事に、その言葉を思い出した。