2022年6月8日(水)

▼宇宙は無の空間で、海は灼熱の地球から生じたガスが雲となり、雨となって気の遠くなるほど降り注いだ結果生まれたと教わった世代としては、小惑星りゅうぐうの砂から、アミノ酸などが検出されたというニュースには、やはり衝撃を受けざるを得ない

▼科学の進展は常識を裏打ちし、また覆す。ヒッグス粒子が発見され、ブラックホールの撮影に成功した。すい星の水の成分が分析され、海の宇宙由来説を後押しする一方、海の成分と一致せず、なぞはさらに深まった

▼りゅうぐうのアミノ酸などが地球の生命を形作るアミノ酸と同一の成分である一方、アミノ酸を構成する左手型と右手型は同数で、生命のほとんどが左手型であることのなぞもまた、深まったともいう

▼ジャワ原人やネアンデルタール人などの旧人がそれぞれ進化して現代の人類になったという地域進化説が単一原人放射説に置き換わったのもつかの間、ネアンデルタール人と現世人類との交接があったとするDNA分析に驚かされた。最近は、恐竜の巨大隕石絶滅説に疑問が投げかけられている。宇宙140億年の歴史からはむろん、地球40億年から見ても数分に満たない時間のことさえこうである

▼一つの発見、解明が、複数の問題の存在を明らかにする。宇宙の起源にもつながる生命の誕生に、なぞは深まりこそすれ、一気に解明されることはあるまい。地球物理学者でオーロラ研究の第一人者は、オーロラ出現の予測が外れるとニヤリと笑ったという

▼未知の分野があることの喜びという。日本人の多くは苦手とされる喜びだが、楽しみたい。