2022年3月21日(月)

▼改正少年法が4月1日施行される前に、共同通信社が実名報道に対する世論調査をした。目的を明記していないが、実名報道を原則とする報道機関にとって、18、19歳を「特定少年」と規定して法が実名報道を解禁するに伴い、実際に報道するかどうかが多く各報道機関に委ねられる。自らの対応を探る意図もあるのかもしれない

▼結果は「どちらかといえば」も含め賛成が89%で、反対は計11%。判断の基準には必ずしもならないが、国民の知る権利を代行することを社会的基盤とする報道機関にとって、報道結果を考える上の参考にはなり得るか。犯罪を許すべきではないという強い気持ちの表れだと元多摩少年院長がコメントしている。少年に対する厳罰化の流れの一環ということでもあろう

▼実名報道解禁の実態を回答者の四割が「知らない」ことも指摘している。更生・矯正教育の必要性を問えば、多くが必要と答えたろうという。設問設定への危険性、すなわち世論調査自体への問題提起とも受け取れる

▼神戸連続児童殺傷事件や西鉄バスジャック事件など、世間の耳目を引く少年事件が起きるたび、逆送の20歳から16歳、さらに14、12歳へ。16歳以上の逆送は原則になるなど、厳罰化が進んだ

▼半面、少年事件は増えておらず、再犯率は減少している。一人一人に向き合って再犯・再非行を防ぐことが少年法の目的、と元多摩少年院長。個人情報保護法やプライバシー保護規定ができると一律禁止で事足れりとする行政と違い社会の安全、非行の減少をめざして報道機関の立ち位置は難しくなる。