2021年11月18日(木)

▼伊勢商工会議所の正副会頭が駅前再開発ビルの早期稼働を鈴木健一市長らに要望した。前日の市議会で、開発業者から市施設の入居を巡り途絶えていた交渉の再開提案があったことが明らかになったばかり。地元経済界の懸念、期待の大きさがにじみ出ている

▼市駅前は大型店が相次いで撤退し、その後の開発が紆余曲折した。市が保健福祉拠点に決めた再開発ビル構想は着実に地域振興に寄与すると見られたが、キーテナントの撤退で不透明になった。撤退リスクを市と共有しようとする業者と、肩代わりを求められていると受け取る市との溝は深まり、市長の基本協定締結断念表明につながった

▼新たな業者の提案は、これまでの市への厳しい要求と打って変わった柔軟さ。理由は銀行金利の緩和というのが業者の説明で、市は業者の体制の変化が姿勢の好転につながったと見る。互いに都合のいい事実を見ているようだが、市の入居断念表明を受けて業者はテナントを探したが乗り出す企業はなく、市との再協議に戻ったという

▼キーテナント撤退の傷はなかったかのごとくスタートするようでもある。商議所の要望書も、再開発ビルが市の保健福祉拠点になりさえすれば駅前のにぎわいが取り戻せると言わんばかりで、片翼飛行に変わりないことの不安には触れていない

▼業者は市依存、市は業者任せの責任回避がこじれた原因だが、その経緯を教訓に双方の体質に変わりがあるかどうか。見切り発車した再開発ビルが結局税金で尻ぬぐいする姿を数多く見てきた。12分に検討することをおろそかにすべきではない。