2021年11月8日(月)

▼最高裁裁判官の適不適を国民が判断する国民審査で、夫婦別性制度を合憲と判断した裁判官4人の罷免率が、他の7人に比べて誤差とはいえないほどの高さだった。言葉は悪いが痛快である

▼最高裁を含め、裁判の判決に首をかしげることは多いが、そのために裁判官が責任を取った話は聞かない。原発事故ではそのことが問題になったが、個人的に反省する裁判官がいた程度だった。平成11年の司法改革でも、裁判所は裁判員制度が導入されたとはいうものの一審だけ。国民の異議申し立ては控訴、上訴など、従来の三審制度の形だけで、あくまで訴訟相手との係争である

▼国民審査は衆院選とともに実施され、任命後初の裁判官と10年目の再審査が対象で、夫婦別性を合憲とした4人が罷免率7%を超えた。その他との差100万票ほどに、ネットの特設サイトで罷免を呼び掛けた人らは「こんなに人の行動が変わるとは」と手応えを語る。「誤差の範囲」とする学者もいる

▼最高裁判事経験者は「特定の判断だけでやめさせるのは問題」としながらも、審査結果には「裁判官同士で気にしていた」と披歴して「世論に気を使う」ようになることを懸念する

▼四日市公害訴訟で被害者側勝利の判決を書いた裁判官は「控訴されることを前提に、高裁に向けて書いた」と朴恵淑三重大特命副学長に語ったという。7%超えの裁判官は沖縄基地騒音訴訟などでも住民敗訴側に立つ。特定の判断がその人となりを物語る

▼最高裁判事の来歴がこれを機に衆院選候補並に知らされることは、国民に開かれた司法として悪いことではない。