2021年11月4日(水)

▼衆院選が終わったばかりのせいか、秋の叙勲で旭日小綬章を受章した元四日市市長、田中俊行さんの言葉にとりわけ感じ入る

▼大学生のころ、田中覚元知事の選挙事務所に出入りしたことなどで「社会を変えていくのは、政治の力が大きい」と実感したそうだ。私事で恐縮だが、かつて県議会や県庁を担当し、政治の力を知った。共感の思いも強い

▼こちらは、今も変わらずその〝監視役〟を自認するが、田中さんは市議、県議、四日市市長と登り詰め、政治の力を存分に発揮し「充実した政治家人生を送ることができた」。ご同慶の至り

▼田中元知事に縁者として、同元知事が招いたとされる四日市公害を後世に伝える「四日市公害と環境未来館」を整備した。同公害発生に苦しむ元知事を間近に見た一人として懸案の処理を終えたという趣旨を語っていた

▼次いで、同公害のイメージ刷新に力を注いだというのも、市長として当然の行動である。公害発生の事実だけを掲載する小中学校の教科書に危機感を募らせ、環境改善の取り組みや成果などを加筆するように求め、成功したという

▼昭和62年に市は公害指定地域を解除され、平成7年に快適環境都市宣言。その流れの一環でもあろう。指定解除には反対闘争があり、環境都市宣言には異論も多かった。移住者や帰省者が今も市独特の臭いを指摘し、嫌悪し、懐かしさを口にする

▼「風化させない」と整備した「四日市公害と環境未来館」と、イメージ刷新を果たそうとした教科書の改善努力。政治の力が大きく、それだけに危険もないかを改めて思い知らされる。