2021年7月20日(火)

▼大相撲史に残る名場面といえば平成13年5月の夏場所千秋楽の優勝決定戦。本割であっけなく突き落とされた東の正横綱貴乃花が見違える気力で西の正横綱武蔵丸を上手投げで仕留め、「鬼の形相」で仁王立ちした。時の小泉純一郎首相から「感動した」と称賛されたが以後、七場所連続休場することになる

▼前日に大けがし、相撲を取れる状況ではないとされたが、出場した。本割での力の入らない相撲を取り、決定戦で気づかって立ったが、打って変わった力強さにやられたと武蔵丸が悔やんでいた報道があった

▼時移り、星変わってこの名古屋場所。横綱白鵬と大関照ノ富士との千秋楽全勝対決は立ち合いで仁王立ちのままにらみ合い。白鵬は左手を照ノ富士の顔面に突き出し、強烈な右腕のヒジ打ち。張り手の応酬後、強引な小手投げで仕留めた

▼手を振り下ろすガッツポーズで叫び、顔は、貴乃花を思わせる鬼の形相。感情が爆発? 優勝インタビューでそう聞かれ「この年で全勝優勝なんてね、場所前は思わなかったので。本当にほっとしています」。かみ合っていない気がしたが、思い続けてきた気持ちなのだろう

▼相撲は荒ぶる魂を鎮める儀式とされる。最高位である横綱のなりふり構わぬ相撲と感情の爆発はまた論議を引き起こすかもしれない。六場所連続休場し、3月に膝の手術をした白鵬に、13日目で優勝に待ったをかけるのは照ノ富士一人になった

▼その二人との実力差は、ファンの目としてだが、違いすぎる。荒ぶる魂のない大相撲で、品格だ、横綱相撲だと言ってもバカげたことの気がする。