2021年7月4日(日)

▼新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種に次ぐ対象者を示す三重県の指針に「東京五輪・パラリンピックの関係者」を加えたことは、腹にすとんと落ちにくかった人もいたのではないか

▼審判やスタッフ、ホストタウンの関係者や会場に派遣される警察官などを例示。「安心安全な大会を運営するという観点から早期の接種が重要」というのに一定の理解はする。気になるのは、五輪開催までに間に合うのかと質問され、鈴木英敬知事が「実は既に接種した人もおり、改めて指針に明示した側面もある」と答えたことだ

▼高齢者に続く優先接種者を県が指針にして発表したのは5月末。都道府県初の試みで、知事は「ワクチンを無駄にしないための指針。透明性や説明責任を果たすという観点もある」と述べた。既に接種した五輪関係者がいるということは、この説明と矛盾しないか

▼指針発表直前にスギホールディングス創業者夫妻の予約に愛知県西尾市が便宜を図った問題が浮上。鈴木知事は「あってはならない」とし「接種を希望する人に優劣はない」と述べた。また一部首長らがこっそり接種していて、知事は「(事前接種は)住民の皆さんに説明責任が果たせるようにすることが重要」

▼五輪関係者を特別扱いにするのかと目くじらを立てるつもりはない。第5波が懸念されている首都圏へ、万全の備えで向かってほしい。それだけに指針への追加が実態より遅れ、透明性、説明責任が後回しになった感があるのを惜しむのである

▼知事のこれまでの見解と異なる手順に政局のうねりが大きくなるのを感じたりもする。