2021年6月22日(火)

▼「緑茶はガンに効く」というニュースが四半世紀前、日本中を駆け巡った。耳慣れない学会での発表でもあったせいか、新聞の扱いはそれほど大きくなかったが、たまたま視察した県内の茶どころで製茶工場の幹部らが満面の笑みを浮かべていた。注文が跳ね上がったという

▼お茶の成分のカテキンが抗がん作用はじめ成人病効果があり、たくさん飲めば飲むほどがん発症年齢を遅らせるみたいな話で、茶業界は笑いの止まらぬことではあった。類似効果をうたう健康食品の続出で神通力に陰りも見えるところにコロナ禍が直撃した

▼小売店・飲食店の休業、観光客の減少、冠婚葬祭の取りやめなどで業務用、贈答用の販売が激減した。救済法制定も申請しているが、鈴鹿市は「鈴鹿のお茶は世界に通ずキャンペーン」の販促事業を始めた。ネット中心の販路拡大が柱で、味や成人病効果は二の次のようなのはそれだけ切羽詰まっているということだろう

▼子どものころ食後に必ず祖母が茶碗に茶を注いだ。消化にいいのと、ご飯粒がとれて洗うのに楽という「おばあさんの知恵」だが、茶碗そのものが茶を飲む器からの変化だし、「無茶苦茶」も茶を飲む習慣から生まれた言葉。一服やお茶を濁すなど、生活に密着していたお茶だが、最近の若者はペットボトルを思い浮かべるという

▼JAとの懇親会で土産にもらった茶のおいしさに目を見張り、単身赴任のころは急須で楽しんだ。身近な飲み物だっただけに味に鈍感な中高年も多いのではないか。コロナ禍が一段落したら日本人に茶を再認識させる工夫も必要な気がする。