2021年5月1日(土)

▼いじめや差別発言があると何より当事者らの酷薄さと保身を優先させるかのような学校を見慣れてきたせいか、児童生徒の純真さに触れると熱い感動に満たされる。新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)となった鳥羽市の特別養護老人ホームに対し、日ごろ交流のある近くの中学校の生徒が励ましの寄せ書きを送った

▼発生以来、職員らは自宅に戻ることもできず感染拡大の防止に神経をすり減らしながら入所者の世話に忙殺されたが、施設には対応を責める電話が続き、濃厚接触者以外の職員も含め、差別に追い詰められていった。そこへ届いた寄せ書きである

▼「ファイト陽光苑」「コロナに負けるな」「私たちも応援しています」―市立加茂中の全校生徒70人の直筆のメッセージで、職員らは涙を流したという。コロナ禍で、今の子どもたちも捨てたものではないなと思うのは将来、医者や看護師になりたいという小中学生が下がるどころか増えているという調査結果が多いこと。特に女子の上昇率が高く「健康を守る仕事ぶりに心ひかれる」という分析もある

▼生徒からの提案から実現したというのもいい。自分らで考えたということであり、クラスター下で苦しむ職員の気持ちを肌で感じられる力があるということだろう。人権教育の発表の場で「初めて聞いた」という県職員や教職員のあっけらかんとした感想を聞き、同教育の衰退を思う

▼いじめやセクハラ防止には本人が声をあげるのが大事―などが県の指針に明記される世の中だ。理解しようとする加茂中の気概が引き継がれていくことを願う。