▼昔、県松阪県民局(当時)が県職員対象に部落差別解消の講座を開いたことがある。同僚記者が取材し報じたが、講師から「どうして名前を出したのか」と抗議された。部落解放運動だけでなく、幅広く人権救済に関わっている女性がなぜ。人づてに問い合わせたら「私にも幼い子がいる」だった
▼「活動家」などのレッテルを貼って見ていた人の平凡な答えが、差別の深刻さを物語っている気がした。断崖絶壁を歩いているような思いで活動しているに違いない。言われなき差別とともに、その矛先が家族へ向かうことへの恐怖、不安とも戦っていたのではないか
▼住所表示で問題になったのは、昭和50年の〝部落地名総鑑事件〟。それらを資料に就職差別をしている企業が多いことが発覚した。電子版が今もネットで出現し、就職差別、結婚差別につながると心配されている
▼同性カップルの氏名と住所を小林貴虎県議が無断でブログに掲載し、副議長の要請で削除した。当事者の削除要請に応じなかったのは同性カップルだと明らかにして活動し、ネットに住所を掲載しているからという。公開質問状を受けたことが発端で、「公に議論するため、届いたものをありのままに公開する必要があると考えた」
▼そうであるなら、性的指向や性自認を第三者に暴露する「アウティング」を禁止する条例を都道府県で初めて制定した意義はずいぶん割引されないか。ホテルで入浴を拒否された元ハンセン病患者が、抗議した途端全国から誹謗中傷の文書、電話が殺到した例もある。条例を主導した鈴木英敬知事はどう思うか。