2021年4月2日(金)

▼国が一県一校の設置を呼びかけている夜間中学について、県教委は「慎重かつ十分な検討が必要」で「入学の希望があれば開校に向けた準備を進める」。その気はありませんということだろう

▼国の呼びかけを聞き流す度胸もなかったのだろう。「教育機会確保法」が平成28年12月に公布されたのに伴い、需要調査なるものを実施した。対象は市町教委の担当者で多くが「具体的なニーズはない」と回答。県の教育担当者の先入観がよく分かった

▼令和元年度にも調査したが回答者は65人。アリバイ証明にもならなかったから昨年再実施した。中学中退者や不十分だった人を対象にしたというから調査らしくなった。学習方法など、夜間中学のニーズを問う以外の設問も増やし識字教室、日本語教室、フリースクールにチラシを配布した。当然ながら約6倍の387人から回答があった。「学び直したい」の答えが約6割というのもまた当然。そんな場があれば「通いたい」は9割を超えた

▼ニーズがないとしてきた県教委は、そんなことではひるまない。「通いたい場」の回答が必ずしも夜間中学ではなかったことから「学び直しの方法にも多様なニーズがあることが分かった」。むろん、それらニーズに応える気はない

▼一連の流れが「始めに結論ありき」を物語る。本来は夜間中学の魅力を工夫、伝え切れていないことも問われるのだが、自浄能力があるのかを嫌と言うほど疑われてきた県教育界。国の説く「重要な役割」も、当事者らのニーズも馬耳東風で馬の耳に念仏、と言ったら馬に叱られるか。