2021年3月31日(水)

▼男女間の暴力被害という内閣府男女共同参画局の調査結果を今年初めて関心深く見た。平成11年度から3年ごとに実施していたそうだが、これまでは同じ部署の女性に対する暴力の調査研究に気持ちが向いていた。「配偶者からの暴力」といえば男性が女性へのことという先入観があった。女性の約10人に1人は何度も被害にあっているが、男女別の被害者は女性が4人に1人、男性は5人に1人

▼国連婦人年の昭和50年に県が開いたシンポジウムで、デンマーク大使だった高橋展子さんが男女別の職業募集の不合理を語った。警備員など男性が対象とされる職業にしても、弱い男よりたくましい女性がいいに決まっている、と

▼命の危険を感じた被害者は8人に1人だが、うち女性は5人に1人で、男性の被害者219人の中にも5・0%いる。腕っ節の強い女性からとは限らない。刃物で背後から夫の首筋や背中を刺した妻が、1件は覚醒剤による心身喪失が認められ、もう1件は不起訴で〝無罪〟になった

▼後者の理由を津地検は明らかにしていないが、殺すつもりはなかったということだろう。理由にくむべき事情があったということかもしれない。家庭で包丁は常備品だが、銃社会の米国の理屈と違いがあるのか。説明を聞いてみたい気がする

▼同居の交際相手からの被害は、男女とも4割でほぼ同数。男女共同参画局は男女間の暴力被害防止を呼びかけるが、用いるのは「女性に対する暴力根絶のためのシンボルマーク」。優先度は対男性としても、こちらも男女平等を真剣に考える時代なのかもしれない。