2020年12月12日(土)

▼新都市開発整備事業「ゆめぽりす伊賀」(伊賀市)の中核施設「県立ゆめドームうえの」の売却方針に対し、県議会常任委員会で志摩市選出の中嶋年規委員が慎重論を唱えた。地元伊賀市選出の委員が言っては引っ込みがつかなくなる。思いを背負ってということか

▼新都市開発の計画段階では伊賀市選出県議がこぞって県の中核施設を要望した。念頭には、世界祝祭博覧会(平成6年)の主会場として県が設立した県営サンアリーナがある。文化施設を建設して旧上野市に無償譲渡するという県の当初案に強く抵抗した

▼サンアリーナは県が運営するのに、新都市の中核施設はなぜ市に押しつけるのかというのだ。内容も、市民が求めているのはスポーツ施設だとして規模を拡大させた。基金を設立して利子で運営費をまかなえる時代であり、県も安易に要求を丸のみしていった

▼お手本にしたサンアリーナが管理運営費の負担に苦しみ、民間譲渡案が浮かんでは消えて平成18年、指定管理者制度に移行した。管理運営してきた三重ビジターズ推進機構が民間に敗れて解散した

▼同時に指定管理者制度を導入した「ゆめドームうえの」が民間移譲する方針。成立しない時は施設の改修も維持も民間任せの「PFI方式」を採用するという。当初指定管理者も務めた伊賀市は「多大な維持管理費のため、授受は困難」と、県の色あせた無償移譲の打診を拒否した。ほとほともてあましている様子がうかがえる

▼高度成長期やバブル期のツケを先送りし、いよいよ行き詰まったということか。夏草やツワモノどもが夢の跡―芭蕉。