2020年11月18日(水)

▼押印廃止の県幹部会議で、鈴木英敬知事は存続検討の50件についても「廃止できない理由は基本的にない」。法手続きとの調整などどこ吹く風の鼻息だ。国の意向に沿った先駆的自治体として、また審議会などの委員入りを狙っているのかもしれない

▼国と競うように知事が押印廃止を表明して以来、県の出先機関などから本当に押印箇所が多い、という苦情はしばしば寄せられる。菅義偉前官房長官と小池百合子都知事のバトルではないが、押印廃止は「圧倒的に県の問題」であり「国の問題」であるのだろう

▼「大事なことは、押印の廃止を早く決めて、県民に混乱がないよう早く県民すること」と知事。民間とって、押印より申請時の書類の量の多さの方が切実な問題。知事にとっても「特例が残ると、デジタル化なんて絶対できない」の方が問題であろう

▼河野太郎行革相が「押印廃止」と書かれたはんこの写真をツイッターに投稿して業界の猛反発を受け「誰かを不快にする意図はない」と釈明した。はんこ業界などは「誰か」にも入っていなかったのだろう

▼閣議書に書く花押は存続という。政界アンテナはそれなりに健在か。花押は印章とは認めずとした最高裁判決を意識してか。松阪から会津に転封になった戦国大名蒲生氏郷は伊達政宗が背後に控える一揆に悩み、証拠文書とともに秀吉に訴えた。正宗は評定の場で少しも慌てず、自分の文書の花押は偽書防止にセキレイの目に針で穴を開けていると主張。用心深さに重役らを驚かせた

▼押印廃止でカラ出張や公印・印鑑盗用が増えぬよう備えを願いたい。