2020年7月17日(金)

▼シーテック(本社・名古屋市)が計画する「ウインドパーク布引北風力発電事業(仮称)」に対して、伊賀市の住民自治組織が中止を求める要望書を鈴木英敬知事に提出した。「地域の霊山から伊勢湾を望む景観が著しく損なわれる。絶対に容認できない」

▼霊山とは、広辞苑によると「神仏などをまつる神聖な山」。異常気象の中で山の重要性が増しているが、事業は津市、伊賀市にまたがる同山系約862万平方メートルに風力発電機28基を令和9年に稼働させる大規模な計画だ。防災はむろん、低周波音による健康被害に不安を感じるのは当然ではある

▼当初は亀山を含む3市を対象に40基の予定だった。自然エネルギーの推進を唱える鈴木知事が就任直後いち早く承認したが、太陽光とともに、自然環境に重大な爪痕を残す可能性が指摘され、苦渋の後退を迫られている

▼真っ先に反対の声を上げ、運動を拡大させた亀山市の住民に対し、シーテックは「亀山は除外」決定をし、櫻井義之市長はその判断に「敬意と感謝」の意を表明した。が、別に同市のことを思っての除外でないことは、伊賀市住民の説明会開催要請に「既に3市で実施しており、新たに開く予定はない」とけんもほろろなのを見ても分かる

▼7年前に同社の風力発電の3枚の羽根と発電機が吹っ飛び、60メートル先まで飛び散って山肌に突き刺さり、その深い傷跡とともに県民を震え上がらせた。「環境問題の対策に資する」(県担当者)の認識が根強い中で、自然環境に強い負荷を与える存在である側面をまだまだ見ようとはしていないようだ。