2020年4月21日(火)

▼私事にわたって恐縮だが、1月に新型コロナウイルスの感染者が大阪で出たと聞き、30年来続けていた2月3日の大阪訪問をやめたのは十数年前のノロウイルスの恐怖体験があるからだ

▼あっという間に家族4人に広がった。「空気感染はない」と距離を取っていた長女もあえなく感染。祖父母に報告に行って「精神がたるんでいるからだ」と叱責されたが、翌日には祖父母もかかった

▼空気感染がないのにマスクをしてなぜ感染を広げたか。感染力の強さと通説が当てにならぬことを痛感した。新型コロナでも「接触をしないことです」と専門家は言う。接触をしないとはどういうことか。無症状からの感染とともに2メートルの間隔が必要などと知らされたのは緊急事態宣言の前後になってからだ

▼厚生労働省がホームページで「空気感染は起きていないと考えられていますが」として閉鎖空間や近距離の会話に注意を促したのは2月25日からという。それまでは「飛沫感染と接触感染」のみ。衛生陶器メーカーが3月末にラジオでトイレの水はフタを閉めてから流すよう呼びかけていた

▼粒子が長時間空中に浮遊し、後から入った人に感染の危険があるためという。大阪のライブハウスなどで集団感染が起きた理由が氷解する気がした。この粒子はエアロゾルと呼ばれ、2月初めには中国が警戒を呼びかけていた

▼移動や3密の禁止よりエアロゾルの存在を知らせることの方が感染防止になったのではないか。行政も専門家も、なぜ素人でも分かる言葉で危険を知らせなかったか。お定まりの人災という言葉が頭をかすめる。