大観小観2020年4月5日(日)

▼昔、鈴鹿市を巡る疑惑で県議の関与が取りざたされたことがあった。「A県議」と表記し経緯を報じたら、末松則子市長の父で、当時県議だった充生氏(故人)から抗議された。「市選出県議全員が疑われ迷惑。実名で書いてくれ」

▼遺産相続を巡る弁護士の不正疑惑の時、やはり匿名にして居住する市と年齢だけ書き、別の弁護士の訪問を受けた。その市の同年代の弁護士は二人で、自分が複数の顧問契約を切られたというのだ。名誉回復してもらおうと経緯を書いた新聞もあったが、これ以上触れられ問題を引きずりたくないとの本人の意向で本紙は何も書かなかった

▼プライバシー保護と影響の関係は一筋縄ではいかない。鈴鹿市での練習会などに参加した五輪メダリストが新型コロナウイルスに感染した問題で、SNS上のデマ拡散に鈴木英敬知事が報道機関にも注意を求めた中で「情報を提供・公開いただくことが難しくなる」とし、同僚の指摘に「読む方によっては不愉快に思う文章だったかも。以後気をつけたい」

▼不愉快だから指摘したと思ったか。冒頭の二例は新聞社の判断がもたらした影響だが、今回は主催者発表まで関係情報を伏せた県の判断が引き起こした可能性が大きい。その自覚はおありですかという問題だ

▼フェイクがまかり通る世の中だが、大騒動になった古今東西のデマは、人心の恐怖、不安を背景にした正確な情報の不足が原因。はしか騒動で感染源秘匿に反省した知事がここにきて原点回帰したか。情報提供が「難しくなる」結果何を招くか。考えて言っているかを問いたいのである。