2020年3月31日(火)

▼ハナ肇とクレイジーキャッツ世代なので、下ネタの入るコミックバンド「ザ・ドリフターズ」には距離感があったが、同じ所属事務所の弟分として親近感はあった。ジャズ喫茶に出演していた無名のころから際立って面白かったが、高い視聴率でお化け番組と言われた『8時だョ!全員集合』の最高潮の時に加わったのが志村けんさんだった

▼ネタがすべってばかり。悩んだことを述懐していた。それまでの5人のメンバーでの笑いのツボが確立しており、まじめさが全身に漂う志村さんの演技は浮いていた。視聴率も下降線をたどったが、その悩みの中から絞り出したギャグが他のメンバーとは異質の面白さとなり、番組終了後も人気を継続、上昇させていったのだろう

▼新型コロナウイルス感染に驚いたが、英国のチャールズ皇太子、ジョンソン首相も発症している。ライブハウスの集団感染と共通項ありと納得させるものがあったが、その死去には例えてみれば日航機墜落事故で亡くなった歌手坂本九に似た理不尽さ、喪失感を覚える

▼国内感染者数2574人。死者も含め、数字の一つ一つが実態を伴って迫ってくる。鈴木英敬知事が愛知、東京などを含む感染拡大地域8都道府県への不要不急な出張、訪問を控えるように呼びかけた。「不要不急な出張」とは何か。「不要不急ではない出張」との間に数え切れないケースが横たわる

▼その狭間で悩む企業、県民も多いだろうが、そんなことを言い出す人はいまい。志村けんさんの死は、それどころではないという緊迫感を国民にさらに植え付けたに違いない。