2020年3月22日(日)

▼「横断歩道 車が止まらな渡れんやん!」「横断歩道 止まってくれてありがとう」ののぼり旗など交通事故防止啓発用品を20日寄贈した日本損害保険協会三重損保会に対し、県警の伊藤達彦交通部長が今年の交通死亡事故の特徴は道路横断中の歩行者が多いことと説明した

▼のぼり旗の標語は原因が運転側にあることを示唆している。伊藤部長は追認した形だが、事実を指摘しただけとも言えなくはない。同日、四日市市の東名阪自動車道で、自損事故を起こしたワゴン車から出た2人が大型トラックにはねられて死亡した。路肩に退避したが、何らかの理由で車に戻ったとみて県警高速隊が「原因を調べている」と報じられた

▼死亡事故を伝える記事の定番だが、警察発表の定番でもある。調査結果が追発表されることはない。死亡事故が減らない全国まれな県にもかかわらず、事故への対応に目立った工夫はない。前年比一進一退だった昨年の年間交通事故死者は過去最少だったが、今年の増加数は異常に高い

▼それを受けた緊急対策期間中の事故でもある。死亡した歩行者9人は全員65歳以上。県警は「思いやり運転」を呼びかけたが、それ以前に、横断歩道を前に徐行するマナーは守られているか、一時停止線を含め、標識は夕方から夜間でも見やすくなっているか。それによっては、歩行者の犠牲が運転者の個人的思いやりのいかんだけに帰せられない

▼消えた白線の多さは交通事故撲滅への長年の基盤整備の怠慢を物語る。事故の検証結果を公表し、認識を共有することも安全意識醸成の一つではないか。