2020年2月9日(日)

▼隣の芝生は青く見えるという。昨年11月に三重県津市で開いた全国人権・同和教育研究大会の総括で、主催者の全国人権教育研究協議会の桒原成壽代表理事が「三重の底力を感じる大会だった」と評価したのはどうか

▼評価の理由は来賓あいさつ。まず鈴木英敬知事。虐待防止や子どもの権利擁護などの人権課題を「一緒にやろう」と呼びかけた。中嶋年規県議会議長は水平社宣言を引用し「熱があるか、光が当たっているか確かめ合おう」。前葉泰幸津市長は小学生の人権懇談会を紹介した上で「会場に選ばれたことを重く受け止める」

▼料理を評するのに器の素晴らしさを論じている気がしなくもないが、過去の開催地の場合、地元の魅力、産品の紹介が多く、それと比べての高い評価らしい。何だが底力の底が浅い気がしないか

▼部落差別解消から始まった人権問題も、その後障害者、子ども、女性、外国人、高齢者、性的少数派など間口が広がった。相対的に部落問題への行政の比重は弱まり、同和対策関連事業が終わった平成14年からその傾向は顕著で、県も例外ではない

▼関連団体の会合への県幹部の出席は潮が引くようになくなった。県職員、教職員の会員減少で関連団体はあえいでいる。部落差別解消法が制定されたが、市町で啓発や関連事業に反映されていないし、市町の人権宣言も近年になるほどスローガンの域を出なくなっている

▼「人権」と銘打つ大会に知事が出席するのは今回初めてではないか。県が実態調査へ重い腰を上げたことと関連するとすれば幸い。全人教の評価が名実ともに実ることを―。