2020年1月6日(月)

▼「ニワトリが先か卵が先か」―この有名な因果性のジレンマを、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の国外逃亡劇でちょっと思い出した

▼森雅子法相は「保釈中の逃亡が正当化される余地はない」と不法な出国を非難する談話を発表した。「もう日本の八百長司法制度の人質ではない。そこでは基本的な人権は否定される。私は正義から逃れたのではない。不正義と政治的迫害から逃れたのである」は、ゴーン被告のコメント

▼盗っ人猛々しいとばかり言えないのは、厚労省の村木厚子さんが逮捕された郵便制度事件で〝人質司法〟の記憶が新しいからだ。保釈後まるで〝座敷牢〟みたいな扱いを受けることは、ゴーン被告で初めて知った

▼そら見たことかというのが、保釈したら逃亡すると言ってきた検察の声。欧米の司法制度を知り「彼と同じ財力、人脈そして行動力がある人が同じ経験をしたなら、同じことをしようとする、少なくともそれを考えるだろうことは想像に難くない」というのが弁護団の一人、高野隆氏の個人的見解である

▼保釈されるためには検察ストーリーを認めざるを得なかったと書いたのはリクルート事件で藤波孝生元官房長官への贈賄を認めた江副浩正元会長。書類を全部押収され「問題はほかにもある。一つ一つ立件すれば1年や2年はいける」と県警に取り調べで言われ、うんざりして認めたと言ったのは県で初めて特別背任罪に問われた協同組合理事長

▼因果関係はともあれ、森法相が「出国審査の厳格化を指示した」。そのことと保釈のあり方を混同して考えるべきではあるまい。